CWC浦和選手とパチューカ本田選手にみる日本人メンタリティ

   

『日本人のメンタリティ』と一括りにしてしまうと語弊が生まれる可能性がある。しかしながら、一般的にみるそれは様々な要素があり悪い部分も露見する。

ネット社会の発達によりあらゆる情報が意のままに入手できる現代は、頭では理解している、知っているが特定の状況に直面した際にはうまく対処できない事が多い。『頭でっかち』と表現するべきか机上論のみなり、事実をしっかり把握出来ない事になってしまう。

筆者はサッカー好きであるため、先日行われたCWC(クラブワールドカップ)という大陸王者が集った大会での日本人、アジア代表の浦和レッズ(日本)、そして北中米カリブ海王者のパチューカ(メキシコ)所属の本田圭佑選手を例に見ていこうと思う。

Sponsored Link

明暗が分かれた浦和とパチューカ本田のメンタリティ

サッカー専門のニュースサイトとは違うのでここでは具体的な戦術内容には触れないでおくが、メンタリティに関してもはっきりとした違いが見て取れた。

Embed from Getty Images

まず触れておかなければならないのは、CWC(クラブワールドカップ)は、他の主要大会と大きく異なる点がある。通常、ナショナルチームが対戦するWC(ワールドカップ)等の大会はグループリーグを戦い合計戦績によりノックアウト方式の決勝トーナメントへと駒を進めるのが一般的だが、CWCは初戦から勝つか負けるかの一発勝負のトーナメント方式である。

大きな大会や注目度が高い初戦の重圧は計り知れないものがあるであろう為、思うようなプレーが出来ない事が予測される。負けても可能性が残るグループリーグの初戦とは違いどのような考え、メンタルで初戦を戦うかは大きな要素を占めてくる。初戦且つ初めての国、スタジアム、天候や対戦相手など考慮すれば尚更である。

Embed from Getty Images

初戦の対アルジャジーラ戦前の浦和サイドのコメントを抜粋

(日本チームとして初めて海外で開催されるクラブワールドカップに出場するが、その意義をどのように捉えてこの大会に臨みたいと考えているか?)
堀 孝史監督
「海外での大会ということですが、日本から離れて戦う大変さはあると思います。そこでしっかりと自分たちのモノを出して、世界に日本の力を示すことができればと思います」

阿部勇樹
「監督とほぼ一緒です(笑)」

抜粋先:浦和レッズ公式サイト

内容としては真っ当というべきか、間違った事は言っていないだろうが正解のようで不正解にも見える。試合後のコメントも総括して言えば「浦和らしく戦えなかった」というものが見て取れた。

逆にパチューカ本田選手のコメントを見てみよう。

Embed from Getty Images

「W杯でも、チャンピオンズリーグでも、クラブW杯でも、ビッグゲーム(大きな大会)の一発目はこんなもん。一発負けたら終わりの緊張感がある試合だった」

「これだけデカい大会で、一番短期(で行なわれる大会)。そういう意味ではこんなに内容がどうでもいい大会はないと思う。結果がすべて。内容がよくなくても、一個勝てば次に進めて、いきなり南米王者とやれる」

浦和は初戦に勝てばスペインの強豪ヨーロッパ王者のレアルマドリーとの対戦の可能性があり、パチューカは初戦に勝てば南米王者のグレミオ(ブラジル)との対戦が見えていた。

技術的な面は抜きに見ても、本田選手は浦和選手と違い、数々の重圧のかかる試合をこなしていて「場数が違う」ために考え方もさすがと言わざるを得ない。

もちろん、「負けても自分たちらしさを世界に見せる」と「うまく出来なくても初戦で勝ち次の強豪との戦う」とどの視点で見るかで違ってくるだろう。

しかし結果的にはより多くの試合、より強い相手と試合をすることがチームや個人の経験値など大きなメリットがあるのは間違いない。サポーターからみてもそれを望んでいただろう。

汚い話、財政的にみてもメリットは大きかったはずだ。

Embed from Getty Images

浦和はアフリカ王者のウィダード・カサブランカ(モロッコ)に3―2で勝利し、5位の賞金150万ドル(約1億7000万円)を手にした。しかし今回のCWCの優勝賞金は500万ドル(約5億6800万円)。準決勝まで勝ち進めば最低でも200万ドル(約2億2700万円)と、その差も大きい。

「それこそ精神論じゃないか」などと突っ込まれそうではあるが、実際初戦のアルジャジーラは主催国枠の出場でアジア王者の浦和が勝てない相手ではなかったはずだ。

結果論にも見えるが、もし浦和に本田のようなメンタリティを持った選手がいて、チームを支えていたら浦和はもっと違った結果を残せていたかもしれないと思わずにはいられない。

日本人のメンタリティ

Embed from Getty Images

冒頭でも記述したが一括りで言ってしまうと語弊が出てしまうが、この「日本人のメンタリティ」には良いところもあれば悪いところもある。

今回の話では、この日本ならではの考え方が大きく結果を左右した一因ではないかとも考えられる。

まず日本人はあまり外国の人と接する機会が少なく競争力や個人としてという考え方が他の先進国と比べて比較的少ないのが特徴である。

日本人口:1億2672万人 (総務省統計局)
在留外国人:238万2822人 (法務省サイト)
割合:1.9%

ドイツ:9%
イタリア:8%
アメリカ:7%
イギリス:7%
参考:世界・外国人の人口割合ランキング

あくまでも表面上の数字ではある。筆者も長い間ヨーロッパに住んでいたが、実際にヨーロッパ諸国やアメリカなど他民族が多く暮らす地域に住んでいた方はわかっていただけるだろう。様々な人種がまわりに溢れている状況が日常となる。

人により思考は様々な上、人種や出身国でも大きく異なる考えを「こう考えるのが当然」「私の気持ちを理解してくれるだとう」と一括りに考える事はナンセンスで、意思表示は最低限やるべき事になる。

「協調性」よりも「個人としてどうしたいのか」、「良くやったよね」より「結果を残す」事の方が比重が大きい事が多く、プロスポーツだけでなくビジネスにおいてもその傾向は顕著である。

サッカーはチームスポーツであり「協調性」は重要な要素で日本のメリットでもあるが、場合によってはデメリットにもなりうる。

海外チームに所属している日本人選手は口を揃えたように「個の能力」ということを言うが、これはそのような環境に身を置かなければ、机上論で分かったようでも本当に感じる事が非常に難しいく、このような舞台ではそれが色濃く映し出される。

 

”スマートじゃなくても結果を残さなければ後はない。”

 

たぶん反感を食らいかねないが、この感覚は日本ではなかなか身につける事は難しいだろう。自分を追い込むのと、嫌が応でも崖っぷちに立たされるのとは大きな違いがあるからだ。トップアスリートともなれば、生活はそれなりの安定がある中でストイックに自分を追い込む事が出来るのはかなり難しい事だろう。

Photo by dfactory on Visualhunt.com / CC BY

また、教育面の違いも大きい。学校ではディベートの様なものが日常的に行われ、どう思うか?というオープンクエスチョン(open question)で自分の意見を述べなければならない環境が多い。それは一つの意見であり、反対意見であっても発言者個人に対する事ではない。しかし、日本の場合はクローズドクエスチョン(closed question) yesかno、賛成か反対などが多く考える能力が身に付かず、討論で反対したらその人自身の人格否定や敵対心を抱くなどの誤解する人も多く、個人で考える環境があまり整わず、意見交換や討論する能力に比較的乏しいのが現状だ。

日本では「回りがそうだから」「空気を読む」など人に合わせる事へ美徳を感じる面があるが、海外では「自分はこうだ」という主張があたりまえなのである。これはエゴでもなく、その先により良いソリューションを導く為に必要な過程なのだ。

ビジネスでも日本では、会議であまり時間をかけない為に賛成か反対とすぐに解決できるような状況で話を進める事を美徳とする場面も多いが、これも会議というよりただの報告会のようなもので、考える能力が活用しにくく、よりよい解決策を引き出しにくい環境だ。

その過程があってこその協調性(チームプレー)で、どうしたいかはっきりせず “らしさ” や ”みんなこう思っているはず” など間違った思い込みのだけに囚われると、いつも通りであったとしてもプレッシャーのかかる場面でよりよい結果を導く事は非常に難しくなるであろう。

浦和選手の「自分たちらしくできなかった」よりも本田選手の「かっこわるくても、次に進む為にスタイルを崩してでも勝ちに行く」姿勢が浦和には少し足りなかったのではないだろうか。

EAFF E-1 サッカー選手権 日本対韓国戦

先日行われたEAFF E-1 サッカー選手権 2017の日本対韓国戦でも、象徴的なシーンがあった。

Embed from Getty Images

言うまでもないが、この大会に招集された日本代表選手は、海外組と呼ばれる国外チームに所属する選手以外で構成され、日程的に上記のCWCの日程と被った事もあり、海外生活以前に国外チームとの対戦経験すら乏しいメンバーの集まりであった。

後半24分右サイドからヨム・ギフンがシュート性FKのボールを送ると小林に当たってゴールとなり、3−1と突き放された。GK中村航輔も反応しており、もし小林に当たらなければ止められた可能性はあるが、FKは見事と言わざるを得ない素晴らしいものであった。

ゴールという事実ではなく、その直後のGK中村航輔と小林の雰囲気が何ともいえない微妙なものだった。

中村は「なんで触ったんだよ」と言わんばかりの落胆した表情を見せ小林もがっくりとした様子をだった。しかし、そのような意思表示をするでもなく微妙な空気だけを残していた。

指示をすれば防げていたとか、小林を責めろという事では一切ないのだがこの大会を通して声を上げてこうしようなどまとめるものや意見や指示をするものも少なかった微妙な距離感が象徴されたシーンに写った。

ハリル監督を叩くメディアは多いが、日の丸を背負うメンバーとしてあの舞台に立ちながらピッチ上で声を荒げてでも意見をいい一丸となって試合に勝ちにいくという姿勢すら見せなかった選手の罪も同等に重いのではないか。

後記

「メンタリティ」と曖昧なテーマではあり、もちろん反論もあるかもしれない。しかし、日本人には他とは異なるメンタリティがあり、メリットももちろんあるがデメリットも含む事も事実でその現実は受け止めなければならない。

戦う闘志などと精神論で言いたくはないが、スポーツだけでなくビジネスや生活においても自分の意思を主張しなければならない場面があり、それをすることはよりよい結果をもたらすためには必要な要素であると言う事を理解しておくことが必要なのではないだろうか。

 - Sports, コラム